銭湯の男たち

冬の寒さに耐えかねて、最近は徒歩で行ける銭湯兼サウナまで週に数回ほど通っている。

 

洋服も役職もない文字通り『裸の世界』で、男たちはそれぞれの時間を過ごしている。

 

湯船に浸かる者。

念入りに髭を剃る者。

仲間と談笑する者。

 

どの男たちも共通しているのは、すべてが明らかということだ。

だからこそ、銭湯での男の肉体は、その男を物語る小説そのものだ。

 

引き締まった肉体には、その男の弛まぬ努力と漲る自信が表出している。一方で、必要以上に肥大した肉体には、その男の油断が集積されている。千手観音像を背中に刺青した肉体には、その男なりの覚悟が描かれている。

 

男たちは、それぞれの物語を生きている。

 

そのようなことを、サウナ室内の薄い酸素を、肺で懸命に拾い集めながら考えていた。全身は汗で濡れていた。頬の先を伝って落ちた汗が足元に当たる。その振動で自分の肉体が存在することを確かめていた。

 

私の肉体は、どのような物語を生きているのか。