【冷凍都市の暮らし】新宿

アルタ前、タワレコ前、ミロード前、南口改札前、東口前など、、
とにかく駅前だけでも出口が多いので、待ち合わせ場所は考えないといけない。

 

そのくせ目印となるようなところは、どの待ち合わせ場所にも、
だいたい人が多くて、落ち合う予定の相手を見つけるのもウォーリーを見つけるくらいの気合いが必要だ。

 

ー新宿ー

 

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そんな都市らしい場所に、よく分からない不思議な懐かしさをおぼえる。

ぼくの高校から大学時代は、新宿でよく友人と時を過ごしていたからだ。


そんな都会で過ごしていたといっても、特に高校生だった当時のぼくは、
大してお金も持っていなかったので、銀杏BOYZを聴きながら甲州街道沿いの道路を、
厭世的な足取りで帰宅するくらいのことしかしていなかった。


新宿にある学校に進んでみて思ったことは、「世の中、色んなやつがいるもんだな」という感想だった。
都内全域から通学が可能な都心部の学校だけあって、価値観の異なる同級生たちと出会った。

 

もちろん、尊敬できるような仲間もいたのだけれど、その多くの出会いは、
自分にとっては、あまり心地の良いものではなかったと記憶している。


基本的に男子たちはチャラついていて、昼休みには教室で輪になって談笑しているか、体育館でバスケをしていた。
また、女子たちは茶髪に染め、誰もがセーターを腰に巻きながらアイプチをした笑顔で、いくつかの島に分かれて恋話をしていた。

 

しかしながら、そんな傍目に見ると遊んでいるような高校生たちだったが、
ちゃんと定期試験前には「やべー、世界史のワークが終わってねー」「おれ英語は得意だからほとんど勉強してないんだよね」などと、それなりに高校生としてやるべきことをやっていた。

 

必死こいて、時には徹夜して、なんとか学校内で1番を取っていた中学までの世界とは、全く異なる世界に飛び込んでしまい、それこそ入学当初は妙に焦っていた気がする。


「どうして、あんな金髪ギャルが、青チャートを開いて休み時間に課題をやってるんだよ・・・!?」


人は見かけによらないこととか、やることをやるとか、努力して結果を出すことなんて、
ちょっとした進学校に入ってしまえば、みんなが当たり前にやっていることだと気がついた。

 

そんなチャラついたやつらに負けたくなくて、それなりに努力してみても、
結局、ぼくは高校卒業までに学年1位どころか、クラス1位さえ取ることもできなかった。

 

「自分は本当に井の中の蛙だったんだな」

 

そんなこんなで、勉強くらいしか自信のなかった当時の自分に、
現実世界の厳しさを教えてくれたのが新宿の街だった。

 

「何者でもない自分」と出会えたことは、
高校に進学して最大の学びだったのかもしれない。


加えて、あまり思い出したくもないことだが、周囲の小慣れた高校生たちのグループに入りたくて、
なんとかギリギリ高校生っぽく振舞っていた自分は、やっぱりなかなかグループに入り切れなくて、
昼休みの時間が、何より気だるくて早く終わって欲しい時間だった。

3年生になると、受験勉強を言い訳にして、ほとんどの休み時間は図書室で勉強するフリをしていた。それくらいに、新宿の街は自分にとって冷凍都市の暮らしだった。


そんなぼくも、大学に進学すると新宿の風景は変わった。

 

「バイト終わったら店で合流する!」
買ったばかりのウィルコムの端末を使って、講義を受けながら友人に返信していた。

 

大学はとにかく気楽だった。
語学やゼミを除いて、コミュニティの枠組みに強制されなくて済むからだ。

 

好きな勉強を優先して、サボりたい勉強は読書して、
とにかく「主体的」な学びが許された。付き合う仲間も選ぶことができた。

 

そして、気の合う友人や気になる相手とは、よく新宿で遊んでいた。

できるだけ雨に濡れずに、駅から目的地まで地下道を通って向かうことができるくらいには、新宿の街を知り尽くしていた。取り立てて何にも自慢できるような話ではない。
でも、それくらいに新宿の街が好きで、ホームにしている自分がいた。


別に何が楽しいわけでもないのだけれど、
アルタ前、タワレコ前、ミロード前、南口改札前、東口前などに集まって、
友人たちと酒を飲むことだけで楽しかったのだから仕方ない。

 

気になる相手と飲みに行った日には、「もうちょっと飲もうか」なんてことを言いながら、駅まで向かう帰路の途中で方向転換したりとか、南口前のマックで唐突に別れ話を切り出されたりとか、たくさんの人と膨大な量のコミュニケーションや感情を、新宿の街で流通させていた。

 

高校時代の不完全燃焼な気持ちを拭い去るように、新宿の街で遊んでいた。
ある種のリハビリテーションのようなものだったのかもしれない。新宿療法だ。


とにかく店が多いので、集まる人数と雰囲気に合わせて、店を探して飲むのが楽しかった。

幹事をやると店の知識が増えるのが楽しくて、よく引き受けた。
脳内のホットペッパーに掲載店舗を増やしていった。

 

もちろん、街にいる人が多いからこそ事前予約は必須だ。
複数名で酒を飲む時には、予約をしないと難民になることを教えてくれたのも新宿だった。

 

また、キャッチのお兄さんについていくと、頼んでもいないポテトサラダが出てきて、
2人で2杯ずつも飲んでいないのに、会計で8,000円くらいを請求されることもあった。
知らない人について行ってはいけないことを、大人になってから再び新宿で学び直した。

 

そんなこんなで、色んな記憶がある街だからこそ、

ぼくは新宿の雑踏が、嫌気がするけど妙に懐かしい。

 

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少し大人になった今だからこそ、新宿伊勢丹前とかで集合して、
ちょっとカジュアルに新宿三丁目の飲み屋とかで、平日夜にサクッと飲んだりしたいなー。