ひとりぐらし 〜掃除〜

忙しいと、ついつい後回しになってしまうけれど、部屋の掃除をすることは、おおむね自分にとって好きな行為だ。

 

食事と睡眠と、少しの休息程度にしか生活をしていない部屋でも、日が経過すれば自然とフローリングに埃もたまれば、キッチンだって汚れる。人が生きることは、環境を汚染することと同義だ。

 

100円ショップで調達した“クイックルワイパーに形状が酷似したもの”に、専用のシートを取り付けて掃除する。ひとりぐらし用の部屋ならば、それだけあれば一瞬で掃除が完了する。うちでiRobotが働いたら、サボることをおぼえてしまいそうだ。

 

掃除をすると、環境が整うから、生活が快適になる。奇麗になるから達成感もある。脳内に僅かな快楽物質が流れるのが分かる。すばやく掃除ができる部屋だから、その快楽が癖になって、ついストレスが溜まると部屋の掃除をしている自分がいる。奇麗になるだけではなくて、ストレスの発散もできて一石二鳥だ。

 

ところで、そんな自分が、ずっと気になっていた場所があった。

 

バスルームの排水溝だ。

 

こいつは、“クイックルワイパー的なもの”では、片付けられない。

休日の朝、この難攻不落の城(と見えている)に、手をつけることにした。やってしまえばどうってことはない。絡まった髪を取り除くだけだ。これで、うちのバスルームの排水溝を流れる水は、引力の導きに対して、素直に従うだろう。

 

それにしても、こんなところにまで長い髪を落としていくなんて。

 

まとめたゴミ袋を、外にある集積場まで運びながら、ぼんやりと曇り空を見上げた。

今日は雨が降りそうだ。