ひとりぐらし 〜住めば都〜

「以上で、ご契約の説明は終了です」

思いつきのひとりぐらし。それでも、手続きまでが無事に完了した。

やってみると、あっさりとしたものである。

 

入居予定日に現地で管理会社から鍵を受け取り、中に入る。

ひとまず、空っぽの部屋に荷物を置いて、インフラ周りの手続き電話をする。

会社でも事業所の開設などで、少しやったことはあるが、東京電力は、どうしてこうもコールセンターのスタッフが少ないのか。部屋の掃除をしつつ、スピーカーモードにした電話から自動音声に「しばらくお待ちください」と、なだめられる。

 

最低限の日用消費材と調理具、寝具などをそろえつつ、部屋の照明を買うのを忘れたことに気がついた。入り口からキッチンやトイレ・バスの照明はついていたが、部屋の照明は後付けしなければいけなかった。ドンキホーテまで行けば買えたのかもしれないが、翌日も仕事だったのと、買い物疲れで、その日はすぐに眠ってしまった。

迎えた翌日、会社の帰りに照明は買ったものの、イスやテーブルなど、何かしら脚立の役割をするものがないことに気がつく(笑)必要最低限の備品でスタートしようとしていたが、「台になるもの」も必要だった。

結局のところ、週末にローテーブルを購入するまで、夜間はキッチンの照明のみで必要な作業などをして過ごしていた。1Kのキッチンなんて、さほど広いものではないので、本当に小さい廊下で、フローリングに直で座りながら作業をしていた。実に原始的な生活だったが、それすらも「新しい環境」を求めていた自分は、半ば楽しんでいた。一時期、酷い時には会社の床で眠ってから会社に出勤していた自分からすれば、よっぽど人間らしい生活だ。

 

住めば都なのである。

 

ローテーブルを組み立てて、それを踏み台に、天井へ照明を取り付けた時は、ささやかながら文明開化の気分を味わった。これで、やっと人間らしい生活ができる。電気とか水道とか、インフラ系の当たり前のものが、当たり前のものとしてあり続ける素晴らしさを感じた。自分のやっている仕事は、お客さんから当たり前に必要なものとして、求められているのだろうか。そんなことも考えたりした。